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2010-06-02

IM@S FANT@SY Ⅴ 第四話 始動!!-3

「あの、すみません…」

「背が高くておっとりした女性を…」

「金髪のクセっ毛なコなんですけど…」

店の常連客に、旅の者、店のマスターに、情報屋。果ては貿易商のバイヤーに至るまで、
聞ける限り様々な条件や職業の人間に二人の情報を求めたが、
返ってくる答えはみな異口同音に「わからない」のまま、酒場から酒場へと、
まるで光を求めさまよう羽虫のように、夜の街に手がかりを探し歩き続けた。

「はぁ、もう街の中ほどまで戻ってきましたけど、未だに手掛かりゼロですよ?」

「ホントにこの街で手がかりが見つかるんですかねぇ?」と歩き疲れ、
ぐったりした春香がボヤく。

「何言ってるのよ。まだ半分くらいしか回ってないじゃない?さぁ!次で25軒目よ!オー!」

そう言って両腕を大きく突き上げ、レナだけが意気揚々と酒場へと入って行った。

「は~い。おビールですよ~♪」

「当店自慢のお酒と一緒に、おつまみはいかがですか~?」

この店では、若い女性が客席まで酒を運んで行ったり、
つまみを持った売り子が客席の間を行き来したりと、
他の店とは随分と違うサービスを行っていた。

「あら?いらっしゃいませ~♪」

「いらっしゃいませー!」

先ほどまでつまみを持って客席を往来していた少女が、春香たちに振り返るなり、
指を指して言った。

「アレ?春香と小鳥だー!いらっしゃいなのー!」

「え、ええぇ!?美希ちゃん!?」

「こんなところで何してるの!?」と声を大にして驚く小鳥。

「ん?バイトだよ?」

さもそれが当り前であるかのように、美希は答えた。

―――そうじゃなくて、美希の歳で…

「あら?」

先ほど客席へ酒を届けた女性が、入り口での美希たちのやり取りに気付いた。

「美希ちゃん?お客様がどうかなさったの?」

そちらへと歩み寄りながら女性が美希に尋ねる。

「あらあら。春香ちゃんに音無さんじゃありませんか。いらっしゃいませ」

「あ、あ、あずささんまで!!」

そのように愛想よく笑顔で近付いてきた女性は、あずさであった。

「ホラ!当たったじゃない!しかも二人とも同時に」

―――まさか本人たちがいるとは思ってなかったけど…。―――

「私はレナ。申し訳ないのだけど、すぐについてきてもらえないかしら?
事情は移動しながら話すから」

レナが二人についてきてくれるよう促す。だが、

「レナっていう人?残念。それはムリなの」

美希が真剣な面持ちで、きっぱりと断った。

「どうして?」

「だってバイトしてるし」

「だから、今はそれどころではないし、あなただって、元いた場所に帰りたいでしょう?」

「む~。でも、それはできないの!」

「あの~」

レナと美希の主張がぶつかり合ってしまい、要領の得ない会話に、あずさが割って入った。

「何?」

「実は私たち、この街の外で倒れていたところを、
この店のマスターが運んで、介抱してくださったそうなんですよ」

「そう!それでミキたち、ここを手伝ってくれないかって言われて」

「助けていただいた手前、断りづらく…。
あてもなく外を旅するわけにもいきませんから、
結局、その流れでお手伝いをすることに…」

こうなってしまった現状に、実に申し訳なさそうに、あずさが事情を説明した。

「うあー。参ったわねー」

その言葉を聞き、ついにレナは頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。

「あ、あの~レナさん?」

沈黙するレナに、心配そうに春香が頭上から声をかけた。

「わかったわ。一回落ち着きましょう」

何かを吹っ切るように勢いよくスッと立ち上がると、レナはそう言った。

「それじゃあ、こちらのお席へどうぞなの!」

美希が元気よく、入り口に最も近い場所にあるテーブルを腕をピンと伸ばし、
大きく広げた手で指し示した。

「そうね……一旦座りましょう」

店に入る前とは正反対のテンションになったレナは、
店内の喧騒にかき消されてしまいそうなくらいの声で答えた。

「すぐにお水をお持ちしますね」

あずさはそう言って、いそいそとカウンターの方へと向かって行った。

「どうしましょう?」

酒を飲んでいないにも関わらず、酔い潰れたかのように机に突っ伏すレナに、
春香が問いかける。

「お水です、どうぞ。落ち着きますよ」

春香の問いかけにも押し黙るレナたちのもとに、
水の入ったグラスと、ピッチャーを持ったあずさが戻ってきた。

「ご注文は、何になさいますか?」

注文伝票とペンを持ってあずさが尋ねる。

「ありがとう。でも、水だけでいいわ。何かあれば、また呼ぶから」

そう言ってレナはどうにか空笑いを浮かべた。

「ではまた、ご注文があればお呼びください」

そう言って一礼すると、あずさは再び他のテーブルへと注文を取りに行った。

「う~ん」

と唸りながら、レナがグラスに口をつける。

「それで、どうするんですか?」

グラスに入った氷を指でコツンコツンと突っつきながら、春香がレナに尋ねる。

「そうねぇ。やっぱりマスターに交渉するしかないでしょうねぇ」

最初からわかっていたことだが、ため息混じりにレナが言った。

「さ、行きましょう」

否応なく3人は、あずさと美希を引き取るための交渉をしに、
マスターのいるカウンターへと近付いていった。

「すみません」

カウンターでグラスを拭く、髭を生やした小洒落た中年の男に、レナが話しかけた。

「注文かい?」

男は気のよさそうな返事を返す。

「いえ。今日ここに入った二人の身柄を引き取りたいのですが…」

レナが本題を切り出すと、男は途端に不機嫌な顔つきへと変え、

「ダメダメ。あの二人が入ってきてくれたおかげで、
今日だけで昨日までの3日分近い売り上げができてるんだ。
このまま二人がいてくれたら、この店は繁盛間違いなしだ」

と指を振って断った。

「……くっ」

商売人を相手にする時点で予想できていた反論とはいえ、
やはり自分の店の売り上げに最優先にこだわるというのは、
端の者から見れば、あまり気分のよいものではない。

「第一この店は、ここいらのライバルから随分差をつけられちまってたんだ。
おかげで売り上げが落ちるわ、給料が悪いってんでスタッフは離れるわで、
彼女らが来てくれたおかげで、この店は持ち直すきっかけを掴めるかも知れねぇんだ。
そう簡単には手放せないよ」

そう男は続けた。

「じゃあ、売り上げが上がって、いいスタッフを呼べるだけのお金が貯まれば、
彼女たちを引き取らせてもらえるのね?」

聞き入れられるにはギリギリの内容ではあるが、レナは条件を提示し、交渉を続けた。

「そうだな。それなら考えてやってもいい」

手で顎髭をこすりながら、マスターはその言葉を聞き入れた。

「いくら?」

この条件において、最も重要なことをレナが尋ねる。
ここが交渉の肝である。相手の提示額と自分たちの要求額が食い違えば、
交渉は破綻してしまい、二度と彼女らをこの店から解放できなくなってしまう。

「60。60万ギルだ」

男が額を提示する。

「60!?高すぎるわ」

一日の売り上げなどたかが知れている。
それを60万も稼ぎだそうと思ったら、その間にクリスタルは砕け、
世界が終ってしまうかも知れない。

「20よ」

おそらくこの程度ならレナの考えが当たれば、
頑張れば1日で届くだろうというギリギリの額を提示する。

「半額以下だと!?ふざけるな。50だ」

「30」

「40!悪いがこれでもかなり負けてる。これ以上はさすがに譲れない」

「うっ…!」

これにはさすがのレナも言葉を詰まらせた。実際、60からの40なのだ。
これはどんなに頑張っても1日で稼ぎ切れる額ではないが、
半額の30を蹴られている以上、これ以上声をかけることは、
交渉の決裂にも繋がりかねない。

「わかったわ。…40でOKよ」

レナは納得せざるを得なかった。

「ただし」

ここでレナはさらに条件を加える。

「私たちも働かせてもらうわ」

「え!えぇ!?」

「そんな!?私たち聞いてませんよ~」

全くの予期せぬレナの言葉に二人が驚く。

「当り前でしょ!?
あなたたち、自分たちの手で仲間を助けないつもり!?元の世界に帰りたくないの!?」

二人の反論にレナが猛烈な勢いで詰め寄る。

「それともあなたたち。こんな見ず知らずの世界と心中する?」

レナがまるでどこぞの不良のように二人の顔を下から睨み上げるように見た。

ここで金を稼ぐのに時間がかかるということは、
その間にクリスタルが砕けてしまうかも知れないということである。

―――できない!それはできない!!―――

二人は互いに顔を見合せぬ方へと視線を逸らしたが、考えは完全に一致していた。

「「…やります」」

二人は泣く泣く承知した。

「じゃあ、がんばりましょ♪」

こうして3人は、残る仲間の解放のためにこのバーで働くこととなった。

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