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2010-05-18

こないだ言ってたヤツ

皆さまは『ある日の牛丼屋』というSSがあるのをご存知でしょうか?

今回はそれを受けて、『ある日のラーメン屋』というSSを行ってみようと思います。
(ただしタイトルは『ある日の学祭帰り』です。理由はあとがきします)





今日は765プロに移ってからの貴音の初仕事、大学祭での営業帰りだ。
なぜいきなりこんなことができたかと言うと、この大学が俺の母校だからだ。

早い話が、俺のコネでこの営業をむしり取ったのだ。

とはいえ、元々961プロ時代に売れていたアイドルだけに、
彼女を売り込むのに、さほど苦労はしなかった。

そんなワケで俺たちは今、俺の地元である名古屋に来ている。

そして今は後夜祭のゲスト出演も終わった、帰りの車中というわけだ。

「貴音、どうだった?大学祭は」

「はい。とても楽しめました。
ライブも盛り上がりましたし、その後も模擬店を回らせていただいて。
中でも、わんだーふぉーげるというサークルが出店していたクレープは、
面妖なものでした」

「そうか」

ミーハーな学生たちに追い回されて気が気じゃなかっただろうに。

俺はそんなことを思って苦笑いを浮かべた。

ハァ。でもここまで来たなら、やっぱり食って帰っておきたいなぁ。

そう思って俺は貴音に聞いた。

「なぁ、貴音。腹減ってないか?」

「申し訳ありません。あいにく、模擬店の料理をいくつもいただきましたので…」

―――クーキュルルルルルル…

と、その時、遠慮しようとした貴音に申し訳なく思うかのように貴音の腹が鳴った。

「ああ!い、今のは、聞かなかったことにしてくださいませ!!」

貴音は真っ赤になった顔を見せないよう、俺から顔をそむけた。

「あっはっは。いいよ、気を遣ったりしなくて。
実は行きたいところってのが、ラーメン屋でさ」

「らぁめん!」

その言葉を聞いた途端、貴音が目をまん丸くして、ランランと輝かせた。

「行くか?」

「はい!」

大きな声で貴音が返事をする。

ウン。元気でよろしい♪

俺は左折して高速へ向かうべき幹線道路を右折、東へ向かってラーメン屋への道を取った。

   ◇   ◇   ◇

アピタが見えてきた。

「ここを曲がれば、図書館通り。っと」

俺は交差点を左折し北上する。

「ここは、図書館通りというのですか?」

「あぁ、そうだよ。長久手図書館がある通りだからね」

そう言ってその道を直進すると、ソレが現れた。

「ほら。アレだよ」

「まぁ。随分と大きな建物なのですね」

貴音が驚いている。でもね貴音、そっちは文化の家だよ。

「貴音、そっちじゃない。あっち」

そう思って、俺は通りの右側を指した。

「あ、あぁ。そうなのですね。キレイな建物です」

貴音は恥ずかしそうに頬を赤らめて、取り繕った。

「あ、あちらの来来亭というお店でしょうか?」

坂を下りきった交差点の向こうにある店を、貴音が指差した。

「あぁ、そこじゃないよ」

俺は食欲そそる黄色の看板を横目に、その道をさらに直進した。

「ここだよ」

と、俺は店の駐車場に車を入れようとした。

「あなた様。お店は混んでいるようです」

駐車場に止まる車を見て貴音は言った。

「大丈夫。こっちに止めるから」

そう言って俺は、道路を挟んで反対側にある第2駐車場に車を止めた。

「ほら、行くよ?」

「あ、あなた様」

俺はそう呼び止める貴音の手を引いて、横断歩道を渡った。

「鶴亀堂?」

「ああ。博多ラーメンのお店だよ」

「ということは、味は…?」

「あぁ、豚骨だよ。中でもこの店はこの辺りじゃスープが濃いことで有名でね」

昨今、この近辺には博多ラーメンの店が多く建った。
だが、その中でもこのラーメン屋は俺の心を鷲掴みにした。

「さ、入ろう」

そうだ。この店の良さは、入って食べれば全てわかる。
どんなに口で説明したって、一口食べればそんなもの吹き飛ぶほどの味だ。

そうして店のガラス扉を引いて貴音を入れた。

「まぁ、これは?」

貴音の前に現れたのは、券売機だ。

「そうそう。この店は食券制なんだ。好きなのを選んでいいよ」

そう言いながら俺は札を券売機に通す。

「あ、あなた様。私だって、自分の分を払えるくらいの有り合わせは持っています」

貴音は困った様子でそう言ったが、そこは逆に、
俺だってラーメンは奢れるくらいの有り合わせはあると言って説得した。

「そうですか。では、ご好意に甘えたいと思います」

そんなにかしこまらなくてもいいのに。
ま、そこが貴音のいいところでもあるワケだけど…。

深々と礼をする貴音を見て、俺はそんなことを思った。

ん?こりゃホントに混み始めるか?

入り口の向こうから学生らしき団体が向かってくるのが見えた。

「早く選ばないと、ご迷惑になりますね」

「いやぁ、いいよ。余程遅くならない限り、学生の団体なら話し込んで待つさ」

それでも結局、貴音は「多少なりとも、ご迷惑には違いありませんから」と、
そそくさと一番普通のラーメンに決めてしまった。

まぁ、いきなり味噌とか変わり種を選ばれるより、
この店の魅力は伝わりやすいだろうから、俺としてもその選択は歓迎かな。

「俺は…」

と言いながら食券機に金を通し、予定調和のようにボタンを押した。

「さ、行こう」

俺は、食券機と席とを隔てている引き戸を引いて、貴音を先に入れた。

「いらっしゃいませ!奥のカウンター席へどうぞ」

元気のいい女のコの店員が席の位置を示してくれる。

「食券をお預かりします」

グラスの用意された席の貴音は右に、俺は左に座りながら、俺たちは食券を渡した。

「麺の硬さはどうされますか?」

「硬さ…ですか?」

そう言いながら貴音が俺を見る。

「特にこだわりがないなら普通でいいよ」

「そうなのですか?では普通で」

あ!貴音ゆっちゃうなよ!

店員がマジックで普通であること示す文字を書きかける…!

「あああ…!」

何とか俺の声でそれを制する。

「かためんで」

俺は、その場を取り繕うのがさもありなんという、
少々不気味かと思えるような半笑いを浮かべて、店員に注文し直した。

「お客様は?」

「生で」

このやり取りはこの店での俺の定形句だ。

店員の女のコが厨房へオーダーを通した。

「あの、あなた様?」

貴音が俺に呼び掛ける。

「ん?何?」

「先程は、なぜ麺の硬さをお上げになったのでしょう?」

「あぁ、それのことか。だってさ、1杯目はスープに浸かってくるワケだよ?
ってことは、1杯目の麺は、実際には頼んだものより少し軟らかくなってくるワケだよ。
ってことは、それよりももう一個二個硬いのを頼んだ方がいいよね?」

ハッ!?しまった!つい勢いに任せて力説しちまった!?

俺は恐る恐る貴音の方を見遣る。

「…………。」

ハァーーー!!キョトーンとしていらっしゃる~!?
何だったら『え?何この人ゆっちゃってんの?』
とか言い出しそうな目で見ていらっしゃる~!!

「っていうこだわりが俺にはあってさ~。ハ…ハハハ」

あぁ~!なんてみっともない空笑いをしてんだ俺は~!

「フフフ」

え?貴音が笑った?

というより、楽しそうに微笑んでいると言った方が正しい。

「あなた様は、まことおもしろき方ですね。
それほどこだわって食べられるらぁめん。あぁ、楽しみです♪」

「ア、アハハハハハ!そう、そうなんだよ。ここのラーメン、ホント美味くてさー!」

ホッ。よかった。貴音には何とかウケてくれたみたいだ。

「お待たせいたしました。こちらラーメンになります」

店員さんが持ってきたラーメンを貴音に渡すよう手で示した。

「こちらがチャーシューメンになります」

「はい」

俺はラーメンを受け取った。

「いただきます」

そう言って口を付け始める貴音の反応を気にしながら、
俺は俺で、儀式とも呼ぶべき食う前の準備をする。

すりごまと……貴音の手前迷うところだが…。

「これは…!なんと濃厚なスープ!
そしてストレートであるにも関わらず、程よくスープの絡む麺!
まこと、おいしいらぁめんです」

ああ、貴音!そんなにスープには手を付けないでくれ…!

「貴音、あんまりスープを飲むと替え玉できなくなっちゃうよ?」

俺がそう言うと、貴音は突然怒り出した。

「わたくしは、替え玉などする気はありません!」

だが、貴音の言葉はそこで終わりではなかった。

「わたくしは、いつでも正々堂々、自分の力でこれからも勝ち進んでゆきます!」

俺はその言葉にキョトーンとなってしまった。

貴音も、そんな俺の様子を見て、
『自分は何かおかしなことを言ったのだろうか?』といった顔でこちらを見て
キョトーンとしている。

「プフッ!」

俺は悪いと思いつつも、その生真面目っぷりと表情に、思わず吹き出してしまった。

「あなた様?わたくしは、何か間違ったことを申し上げたのでしょうか?」

「い、いや。そうじゃないよ。
ただ、その心意気はいいと思うけど、そうじゃなくてさ。コレ」

俺は、チャーシューメンと一緒に買った、『替え玉』と書かれた食券を貴音に見せた。

「これは?」

「博多ラーメンってのはねぇ、細麺で作られるから、大盛りにできないんだよ。
やってしまうと、後半の麺がのびちゃうからね。
だからこうやって、麺だけをおかわりできるようになってるんだよ」

「なんと!そうとは知らずわたくしは…。
あぁ、お恥ずかしい!今のは、お忘れくださいませ!」

「ハハ。まぁ、知らなかったんだし、気にすることはないよ」

やっぱり入れよう。美味くなるし。

そんな会話をしながら、俺は意を決し……にんにくの入った壷に手をかけた。

しばらくして、俺たちは同時くらいに食べ終えた。
だが、なんだか貴音がソワソワしてる…。

「あの、あなた様。少し失礼いたします」

「ん?どうしたの?」

トイレかな?

「替え玉の券を買ってまいります」

あぁ、そういうことか。俺は合点がいき、自分の券を貴音に渡した。

「いいよ。ほら、コレ使いな」

「でもそれではあなた様が…」

「いいってば。すいませ~ん!」

俺は店員さんを呼んだ。

「替え玉。硬さは…」

俺が貴音を見遣る。

「それではばりかたでお願いします」

「ばりかたで。あと、俺は…」

そう言いながら俺はポケットに入った財布に手をかける。

「生で」

そう言って店員さんに120円を渡した。

「ありがとうございます」

「替え玉ばり、生です」

俺たちのオーダーが通る。

「ほらな。ここの店は替え玉に限って、
おつりがなければ現金で替え玉することもできるんだよ」

「なんと!では、食券を気にすることなく、何杯でも替え玉できますね♪」

「えっ?」

結局、貴音も俺も、二つずつの替え玉をして店をでることとなり、帰路についた。

5年先、10年先でも、同じ店で、同じ味で、この店がやっていたらいいなぁ。

ある日の学祭帰り




コメント

 こんにちは、早速読ませて頂きましたw
貴音さん可愛すぎる……!
終始2828しっぱなしでした。
私もいつか自分の作品でこんな可愛い貴音さんを書けるようになりたいですねw

ご訪問&コメありがとうございます!

コレはやるかやらないか迷ったんですよ。
いや、書くだけ書いて公表しないでおこうか
とも思ったんですけど…。
(この辺の詳しくはあとがきで)

そう言っていただけるなら上げた甲斐があったというものですw

アンコール!の第10話も期待していますw

ではまた~ノシ

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